気がつけば三桁 作者:脳内亭
のどがゴロゴロするので、医者に診てもらうと「ああ、これは桁ですね」と言われる。桁?
「じゃあ、お薬だしておきますから」
家に帰り、薬を袋から取りだしてみて、首をかしげる。何だこれは。
\↑/
+○+
(∞)
処方せんには、
『これは桁の薬です。
一口に丸呑みしてください今日中に必ず。
さもないと桁が増えます。
味はなるべく気にしないで。
アレなら粉末にしてのどに塗るもいいだろう。
ぶっちゃけプラシーボですけど。』
呑まずに翌日また診てもらうと「あらあ、二桁になってますね」と言われる。
「じゃあ、お薬だしておきますから」
家に帰り袋を開ける。
≦*≧
<〇◎〇>
〒…〒
?
処方せんは昨日と同様いやもう一枚ある。
『桁を増やしてやつが来る
どこかで桁郎の桁の音
K・E・T・A ケタデーナイト
笑うのどには厄ケタる
桁の脅威に負ケタが最後
あとは野となれ桁となれ』
調子は悪くなる一方だ明日もまた診てもらおう何しろゴロゴロのどが鳴るのだゴロゴロゲラゲラゲタゲタってあれ楽しくなってけたケタ桁?
不意に、彼は神妙な面持ちで、西から昇る陽を一瞥した。けれど他の誰もがそうしたように、彼もまた、数秒と経たずバス停へ向かって歩みを速めるのであった。
頭蓋骨を捜せ 作者:キミヒラ
この交差点でいつも見かけるご婦人がいる。何かを探しているようなのだが…。
「何をお探しですか?」
「実は3年前にここで息子を亡くしたんです。酷い事故でした。大きなトレーラーが曲り切れずに、歩道の端にいた息子を巻き込んだんです。当然、息子の遺体はめちゃくちゃでした。」
「では、息子さんの遺品を捜しに?」
「遺品と言えますかどうか…。息子が夢に出てくるんです。『母さん、頭の骨が足りないよ』って。夢を見るとつい、ここに来てしまうんですよ。」婦人は自嘲気味に言った。
「すみません。見ず知らずの人にこんな話を。なんだか知り合いのような気がしてしまって。」そう言って去っていく婦人の後ろ姿を見ながら、私はにやにやしてしまうのを止められなかった。
ポケットから、3年前に拾った小さな白いかけらを取り出す。
これは、本物だったらしい。頭蓋骨が手に入るなんて、なんてラッキーなんだろう。
そう、私は事故に関係するものを集めるマニアなのだ。
スクリーン・ヒーロー 作者:麻埒コウ
銀幕の世界、という言葉の意味を履き違えた右半分は壁中にアルミホイルを張りつけた。
千人目の血を吸ったばかりの剃刀で壁にかかっていた鉈や斧や銃のふくらみを叩きながら「破壊するだけの道具は世界の外にある」とつぶやいたけれど、左半分が閉じ込められた工房への扉も幕の外。
検索サイトのトップページに更新された突然首から血を噴き出して絶命した999人の遺体の安置所と僕が逃げ込んだ彫刻家の廃屋とを繋ぐ場所にあるはずの教理。
近づく足音の主から隠れようと焦る僕が掴んだドアノブは回らず投擲された炬が消毒用アルコールに引火する。
ぶら下がった千体の蝋人形は彼が今まで出会ってきた人の臍を持っていてこの中にいるはずの恋人を見つけるまで999体の頚動脈を切断した。
揮発性の強い液体に腰まで浸かった彼を見下ろして人形は喋る。
「名前をもった登場人物が、一番多く死んだ映画になるね」
恋人の声ではなかった。
大爆発。
煙が不可視に回帰すると血液の澱にバラバラの指が七本。靴が三つ。
(倫理の嘘を暴く論理が与えた逡巡)
大爆笑。
「失くしちゃったんだ」
「なにを」
「指」
「どこに」
「アルミホイルの中」





